連載小説『東大卒・企画女優』〈25〉
オナニー(3)
「じゃ、やってみようか」監督は手にローションを取りながら言った。
「スカート――脱ぐか、たくしあげるかしてもらえるかな」
私は上品な仕立てのフレアスカートに目をやった。
「これ、は穿いたままじゃいけませんか」
「いいよ。真悠子ちゃんのできる範囲で」
監督は言ってくれた。
「でも、パンツは脱いでもらわないと――でしょう?」
「はい」
私はゴソゴソとスカートの中に手を入れた。紐の結び目を解き、純白のそれをスカートの中から抜き取った。ゴムの跡が残らないように、昨日は一日、下着はつけずに過ごした。今朝もゴムのないものを選んで穿いてきた。
「ふだんやっているように触ってもらえるかな。もう濡れてる?」
「あの、まだそんなには」
私は正直にそう答えた。
「じゃあ、ローションを使って――無理に挿れて怪我なんかしてもあれだから」
監督は私にローションを手わたした。私は頷いた。蓋を開けると、アロマオイルのような心地よい香りがふわりと立ち上った。私は容器を傾けて中身を手に取ると、それを右手の掌全体によくなじませた。そしてベッドの上に両膝をついて腰を立てると、スカートの下から手を這わせ、下腹部に――。
ペチャ、ペチャ、ペチャ――
そんな音が、無言の部屋に響きわたった。
オナニー(3) 了
最近、居間で仕事をすることが多いので、すっかりテレビっ子になってしまいました(笑) 今日も『CONTROL~犯罪心理捜査』と『美しい隣人』を観てしまいました。それにしても、仲間さん、悪い人ですね。あんな隣人はもちたくないものです。檀れいさんがかわいそう。
話は変わりますが、ここしばらく『東大卒・企画女優』では自慰の撮影シーンを扱っています。改稿作業中の新刊『阿依子~彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』にも自慰にまつわるシーンが登場します。
この仕事をしていると、患者(クランケ)の母親から娘の自慰をやめさせたいという相談がしばしば寄せられる。この子にも過去に顕著な自慰癖があったのかも知れない。そんなところをいじると馬鹿になる、手が腐る――そんな脅迫じみた躾が、少女の心に手の使用に関する罪悪感を植えつけたのかも知れない。
(『阿依子』草稿)
子育てをしていると、幼児オナニーの問題にぶつかることがあります。私自身、この問題に体験上の関心があって、無料で公開しているオンライン小説『Mother~母を抱いた少年』の中でも取り上げたことがあります。幼児オナニーを禁じる母親、同時にわが子の性器を何かしらの関心をもって見つめる母親のこと。
「性欲を罪悪視する心理が去勢コンプレックスだ。たとえば、それは幼児オナニーに対する過度の躾などから生じるといわれている」
向坂は説明を始めた。
「こういう仕事をしていると、母親からわが子のオナニーをやめさせてほしいという相談がしばしば寄せられる。だが、躾の仕方によっては、子供の心に性や性器に対する嫌悪感を植えつける」
わが子の自慰を見つめる母親たちの視線――
「君はお母さんから監視され続けてきたんだ。同時に、お母さんは無意識的に君のペニスに固着し続けてきた――ペニスは所有の象徴なのだ」
(『Mother』第41話)
ほとんど同一文ですね(笑) ですが、オリジナルの原稿は『阿依子』のほうが古く、『Mother』のこの場面は『阿依子』からの派生そのものです。
『Mother』は母親を殺害してしまった少年と、その精神鑑定に臨む精神科医の向坂紘一郎の対話を中心に、次第に異界へと迷い込んでゆく向坂の精神的遍歴を描いた作品です。ノーベル賞詩人のイェイツや、「世界で最も邪悪な男」アレイスタ・クロウリーなど、奇々怪々なオカルティストのエピソードも交えながら、話は破滅的な結末へと向かって進んでいきます。社会正義の権化のような地検検事、ノヴァーリスの魔術的観念論やボードレールのコレスポンダンスを嬉々として語る高校生、英語科の男勝りの女性教諭など、周囲の個性的な登場人物にも注目です(笑) それは私自身の高校生活のなつかしい回想でもあります。
【写真】夜の東大医学部本館
一方でこの作品はもともと漫画として構想されていたこともあって、内容、構成とも小説としてはいろいろ不十分な点がありました。なので、無料の作品ではありますけれど、改稿してもう少し面白みのあるものにしたいと思っています。というのは、以前、読者の方からこんなご感想をいただいたことがあって。
英雄として昇華する過程の少年が物語の主人公であるとすると、果たして彼が得るものは何なのだろうか、と回らぬ頭で考えます。世界を呑み込む太母を殺す者は、決まって英雄たる証を手に入れる。けれど少年の手は空であるように見えます。まだ彼の闘いは終わっていないのかもしれないと、母の産道の如く深長な闇を想像し、独り勝手に薄ら寒くなったりして(笑
が、読み進めるごとにタイトルからして実はミスリードなんじゃないかという気もしてきました。ざっと粗筋を見たときは、単純にユング元型論を軸とした現代版母殺し神話という感じかなと思い、そのように解釈して読んでいたのですが、何だか少し違う方向に物語が転じていきそうな雰囲気に……
最後にカタルシスを味わわせていただける予感を抱きつつ、今後ももやもやしながら拝見させていただきたいと思います。
(COMAさん・2008年12月2日)
確かに、この小説は「タイトルからして実はミスリード」なのではという、この方の感想の通りの展開を企図したもので、少年の母殺しの問題とは全く別の問題がクローズアップされてくる仕掛けになっていました。けれど、改めて考えてみると、この読者の方が期待していたものは、もっと別なものではなかったかと思えてならず……。そんなこともあって、ぞんざいな作品ではありますけれど、あえて改稿を決めました。
そうこうしているうちに、いつも本業がおざなりになってしまう私です(笑)
【お話】有坂理紗子さん(文学者)
ヌードアート紀行(第5回)
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りさこニュース
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文学者の有坂理紗子さん(年齢非公開)の高校の先輩に当たるシドニーオリンピック50km競歩代表の小池昭彦さん(37)が2年前の2009年に神戸市立中央体育館で正しいウォーキングの技術について講演・指導していたことがわかった。りさこは「高校在学中に国体で2位に入った人。でも、五輪本番で失格しちゃったんですよね」と残念がる。「もともと日立に一般の社員として入社して、普通に仕事しながら競技してた偉い人。普通に仕事をするというのは大変なこと」と共感を示した。小池さんは慶応大学法学部政治学部出身。在学中はインカレの1万メートル競歩で優勝。スポーツコーディネーター。
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