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2011年10月29日 (土)

連載小説『東大卒・企画女優』〈33〉

連載小説東大卒・企画女優』〈33〉
ぬくもり(5)

   Todai_074

 私と新宿紀伊國屋の関係――思いつく限り、それはたった一つしかない。一九九三年にヨーハン・ヴァレンティン・アンドレーエの薔薇十字的小説『(クリスチャン・ローゼンクロイツの)化学の結婚』の邦訳を出版したのが、ここ紀伊國屋書店だったということ――それだけ。
 卒業のテーマにマルセル・デュシャンを選んだ私は、彼の代表作『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』(通称「大ガラス」)の錬金術的解釈に興味を惹かれた。錬金術といっても、近代以前の疑似科学としてのそれではなく、デュシャンが影響を受けたマラルメを始めとする象徴主義の思想背景となった薔薇十字的ヘルメス哲学として――。
 私はそこから近代薔薇十字運動、エリファス・レヴィの英国薔薇十字協会、象徴派、シュルレアリスムへと対象を広げ、卒論をまとめあげた。その時に読んだ本の一冊が、たまたま紀伊國屋を版元としていたという、それだけの話――。
 私が大学四回生だった平成十二年度から十三年にかけて、東大総合研究博物館のゼミでは、「大ガラス」のレプリカを含む東京大学コレクションの研究が行われていた。私が直接に関わることはなかったけれど、それでも、駒場の教養学部美術博物館にある「大ガラス」東京ヴァージョンには足しげく通ったものだった。当時はまだ改装前で、「大ガラス」は今と異なり、二階の奥まった一角に鎮座していた。冷たい石の床、古びた陳列ケースのくすんだガラスの向こうに、それは奇妙な静けさをたたえ、ぽつねんと佇んでいた。今では手の届かない高みへと押し上げられた石造りの格子天井が、その時は、まだ間近に見上げることができた。今それは、星々の輝きを散りばめた美しい夜空へと姿を変えた。その薄闇の中に、「大ガラス」だけが浮かんでいた。
「新宿紀伊國屋で起こった事件といえば」
 監督は何かを思い出したようだった。
「新宿防毒面全裸行進――知ってるかな?」
「全裸行進?」
 私は、その部分を強調するようにくりかえした。
「そう。紀伊國屋の店内を防毒マスクをつけた全裸の集団が、挙手をしながら行進するという《儀式》――六〇年代から七〇年代にかけて流行したパフォーマンス・アート――ハプニング」
 監督は、私に歩くよう促すと、道すがら続きを話してくれた。
「当時、大阪万博破壊共闘会議の中心人物に名を連ねていた加藤好弘という人物がいたんだけれど――もっとも、かくいう僕もまだ生まれていなかった頃の話だから、本で得た知識にすぎないけれど」
「万博破壊――ですか」
 私はヘルメットにマスク、そしてゲバ棒姿の不穏な集団を想像した。
「その加藤好弘が率いていたのが、六〇年代の伝説的ハプニング集団『ゼロ次元』――紀伊國屋の全裸行進は、彼らの代表的なパフォーマンスとして知られているものなんだよ」
 パフォーマンス――その言葉に、私は何かひっかかるものを感じた。
「あっ」私は思わず叫び声をあげていた。

     ぬくもり(5) 了

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2011年10月26日 (水)

連載小説『東大卒・企画女優』〈32〉

連載小説東大卒・企画女優』〈32〉
ぬくもり(4)

   Tokyo_002

 あの時、彼が私の手を取って導いてくれた時――。
 私は昂ぶりとともに、奇妙な安らぎを感じていた。初めて、自分が赦されたような気がした。これが「甘える」ということなのだろうか? 私は監督に甘えていたのだろうか?
 彼が何らかの思いを込めて私に触れてくれたとすれば、それは私にとって喜びであり、慰めだった。私が頼れるのは監督だけだったし、彼の支えと励ましを必要としていたのだから。
 けれど一方で、私は性的な初体験(もっとも、それを性交に限定してしまえば、私はまだ体験前ということになるのだけれど)を特別視するような幻想は、すでに棄てていた。この年になれば、それも当然かもしれない。だから、人前で初めてヌードになった時も、特に何も感じはしなかったし、仕事だと思えば膣にバイブを押しこむくらい、何とも思わない。そう、私の心はすでに死んでいる。それだけのことかも知れなかった。
 どこをどう歩いたのか――気がつくと私たちは、新宿三丁目、紀伊國屋書店の前にいた。屋外に張り出したイベントスペース、トレードマークの青の看板、そして待ち合わせの人、人、人――。
 それにしても――私は改めて今朝のことを思い出した。この光景、前にどこかで見たような――その強烈な既視感。週間ベスト10ランキングのショーケースを見つめながら、私はぼんやりと考えていた。
「待たせたね、未悠子ちゃん」
 監督は、包みの中身を取り出して見せてくれた。
 黒の背景に浮かび上がる二人のダンサーのパッケージ――フィリップスのDVD『モーリス・ベジャールと二十世紀バレエ団の芸術』――主演は、今は亡きジョルジュ・ドン。
「監督、ベジャールがお好きなんですか?」
 私は、好奇心に目を輝かせながら訊いた。
「うん、まあ」
 監督は照れながら答えた。
「未悠子ちゃんのバレエを見てから、僕も少し勉強してみようという気になって――といっても、ベジャールやフォーサイスしか知らないから、とりあえずね」
 監督は笑いながらもう一冊の本――ヴァレリー・グリーグの『インサイド・バレエ・テクニック』を取り出した。
「勉強熱心なんですね、監督」
 監督の意外な買い物に、私はおどろきを隠せなかった。まさかバレエに興味をもってくれたなんて――それがちょっとだけ嬉しかった。
「ベジャールなら、キーロフ・バレエと共演したホワイト・ナイツ・ガラのドキュメンタリなんかもいいんじゃないかしら。監督の趣味に近い内容だと思いますよ」
「そう」
 監督は、興味深そうに頷いた。
「あの、監督。話は変わるんですけれど」
 私は、そのままの勢いで訊いてみた。
「私、この場所に何か変な見覚えがあるんですけれど……ここ、前に何かで話題になった場所かしら? それがどうしても思い出せなくて」
「ここが?」 
 監督は首をかしげた。
 

     ぬくもり(4) 了

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2011年10月25日 (火)

連載小説『東大卒・企画女優』〈31〉

連載小説東大卒・企画女優』〈31〉
ぬくもり(3)

   Tokyo_001

 だましだまし続けてきた生活のサイクル――それは五年目にして破られた。
 母のネチネチがおさまり、父の沈黙がいくぶん不気味にも感じられたあの頃――私は、唐突に父から喫茶店に呼び出さた。「おまえは、今の状況についてどう考えているのか」――私は、彼のいうところの「事情聴取」を迫られた。
 父は五年を一つの区切りと考えていたのかもしれない。そろそろ将来のことを真剣に考えたらどうなのか――理詰めで説得を試みる父のやり方に、反論の余地などなかった。私は今の自分の立場を自覚し、きちんとした将来設計を立てるよう誓約させられた。とはいえ、今の仕事を辞めたからといって、他にどんな道があるというのだろう? 
 眠れない夜が続いた。不安で心が押しつぶれるようだった。胸の内側からしめつけられるように――私は必死になってそれを支え続けた。
 仕事だけが唯一の慰めだった。子供たちと向かい合っている時間だけが、私にとっての幸せだった。そこだけが、私の居場所――そんな奇妙な安心感があった。誰かと話していないと不安でたまらなかった。一人で暗闇の中に放り出されたような気になって――だから、生徒が来るのが待ち遠しかった。何もしていないと息が詰まりそうで、陰鬱な空想が群雲のように湧き起こるのが、まざまざと感じられた。
 その時、私ははっきりと悟った。
 救われたい――私は誰かによって救ってもらいたいと感じている――。
 生徒が私のことを必要としているのではない。私が生徒を、そしてこの塾を必要としていたのだと――。
「しまったな」
 監督の口から唐突にこぼれた叫び――それが私を現実の思考へと連れ戻した。
「そういえば、これから書店に予約しておいた本とDVDを取りにいくことになっていたんだった――ほら、そこの新宿紀伊國屋」
「どうぞ、取りに行かれてください」私は言った。
「ラーメンは、その後でかまいませんから」
「そう。なんだか申し訳ないな。けっこう歩くことになるけれど」
「平気です」私は微笑みかけた。
「だって私、今朝もまちがえて紀伊國屋まで歩きましたから」
「そうだったね」監督は笑った。
 私たちは、夕暮れの新宿を並んで歩いた。手を握るでも、腕を組むでもなく――。
 けれど私は、心の中で監督に寄り添っていた。これが恋と呼べるものなのかどうか――私には、わからない。けれど監督は、私にとっては、初めての人――私は今日、生まれて初めて男の人に素肌を許したのだから。
 一緒に寝たわけじゃない、口づけすら交わしてはいない。
 けれど、なぜだろう?
 彼は、私にとって特別な男性(ひと)――。
 その湧き上がる心の昂ぶりを、私は、抑えることができなかった。

          ぬくもり(3) 了

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2011年10月14日 (金)

連載小説『東大卒・企画女優』〈30〉

連載小説『東大卒・企画女優〈30〉
ぬくもり(2)

   Hongo_005

 午後の撮影は比較的順調に進んだ。
 正直、自分では何をしているのかよくわからない。例によって「白鳥の湖」を踊り、ショーツ一枚でバー・レッスンの真似事をしてみたり、下着をつけずにクラシック・テュテュ(バレエ用のスカートの短いもの)でピルエットやフェッテ・アン・トールナンで回転してみせる――こんなに踊ったのは久しぶりのことで、私はすっかり息を切らし、剥き出しの胸を小刻みに上下させていた。
 そこで一度、休憩が入り、監督はモニターの前に座りこんで映像のチェックを始めた。
 うん、よく撮れてるね――彼は満足そうに頷いた。
 最後にシャワーで汗を流し、それで今日の撮影は終了、私は今朝の服に着替え、監督が出てくるのを待った。監督は私にラーメンをおごってくれると言っていた。こってりとした、あつあつの豚骨ラーメン――恥ずかしい話だけれど、こんな状況下でも、私の食い意地はそれなりに張っていた。
「ごめん、待たせちゃったね、未悠子ちゃん」
 監督は小走りに私のもとへと駆け寄った。右手にはケースに入れた小型ハンディカム――。
「もしかして監督、ラーメンを食べているところまで撮るつもりなんですか?」
 私は、なじるような口ぶりで監督に訊いた。
「ごめん、一応、用意だけはしておこうと思って。なかなか仕事から離れられない性格でね、貧乏性っていうのかな」
 私たちは、顔を見合わせて笑った。
「少し歩くけど、かまわないかな」
「はい」私は答えた。
「私、タクシーとかって使ったことがないんです。それでお金使うくらいなら、歩いたほうが気が咎めなくて。私のほうが貧乏性なのかも」
「まあ、性格なんだろうね」
 監督は納得したように言った。
「長子的な性格というのかな。未悠子ちゃんらしい気もするね」
「私らしい?」私は訊き返した。
「私って、監督からどんなふうに思われているんですか? それって少し気になるような」
「いい子だよ、未悠子ちゃんは」監督は言った。
「真面目で責任感が強くて――未悠子ちゃんなら、他にもっとわりのいい仕事がいくらでもあったと思うよ。そう思うと、少し人生がもったいないような気もするね」
「どうなんでしょうか」
 同じようなことを、前の職場でも言われたことがある。
「栗真先生ほどの人が、どうしてこんな塾で安月給の講師なんかしているんですか? 先生なら、他にもっといい仕事があると思うんですけど」
 そう言ってくれたのは、同僚の和田さんという講師だった。彼女は美大の出身で、写真家として活動するかたわら、塾や英会話教室の講師をして生計を立てていた。
 和田先生はそう言ってくれたが、私にはちっぽけな学習塾がよく似合っていた。生徒のよき相談相手として、時に友人として――私はどんな子ともうまくやってきたし、保護者からの信頼も厚かった。けれど、副教室長とはいっても、実態はただの業務請負。高卒以下の報酬で、しかも、いざという時の保証は何一つとしてなかった。
 幸いにしてこの六年間、私は病気も怪我もなく、ただの一日も休むことなく、この仕事を勤め上げることができた。病気だけは絶対にできない――そんなつもりで気を張ってきたのも事実だ。このままどうにか、好きな仕事を続けていくことができるなら、どれだけ幸せなことか――そう願わない日はなかった。
 けれど、周囲に甘えてばかりのフリーター生活にも、自ずから限界というものがあった。最初に口を出してきたのは母だった。冗談めかした言い方ではあったけれど、チクリ、チクリと痛いところをついてくる母――私は居心地の悪さを感じ、その話題が出そうになると、居間から逃げ出して自分の部屋に閉じこもった。
 一方、父は私の仕事についてあえて口を出すようなことはなかった。いっとき教職を夢見ていたという父は、私の仕事にそれなりの理解を示していてくれたのかもしれない。父は思ったよりもロマンチストで、私が塾で活躍していることをそれなりに評価してくれているような風があった。それは普段の言葉の端々からもうかがえた。
 逆に母は、覚めた、現実的な思考の持ち主だった。決して冷淡で無感情な人間というのではない。どちらかといえば何にでもすぐ感動し、テレビの前で泣いたり笑ったりをくりかえす、感情表現の豊かな女性だった。それがうちの母親だった。けれど、同時にきわめて小市民的な性格の持ち主でもあった彼女は、夢や理想といったものにはおおむね無関心で、身近にある生活そのものが、母の一番の関心事だった。母親――いや、女とは本来そうしたものなのかもしれない。

            ぬくもり(2) 了

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2011年7月 1日 (金)

連載小説『東大卒・企画女優』〈29〉

book 連載小説『東大卒・企画女優』〈29〉
  ぬくもり(1)

   Light

「じゃ、飯にしようか。カメラ、止めてもらってもいいよ。おつかれさま」
 監督はバイブからコンドームを外しながら、私に向かって微笑みかけた。
「あの、下――穿いてもいいんでしょうか」
 私はおずおずと訊いた。
「えっ」監督は呆気に取られたように声をあげた。
「だから、その、下着とかスカートとか――」
「ああ、もちろん」監督はおかしそうに笑った。
「別にスッポンポンのままでもいいけれど、風邪ひかないようにね」
「いえ、私、穿きますから」つられて私も笑い出した。
「じゃ、向こうで待ってるから。お弁当、マネージャーさんの分も用意してあるから、よかったら食べてください」
「あ、すいません。お気を遣っていただいて」
 香山さんは恐縮の意をこめて一礼した。
「なかなかよかったわよ、未悠子ちゃん」
 スカートを手に、香山さんは言ってくれた。
「でも、あんなのでちゃんとした作品になるのか、心配ですけれど……」
「いいんじゃないの」香山さんは言った。
「今の未悠子ちゃんのセールスポイントは過激さじゃないんだから。大丈夫、未悠子ちゃんは東大出なんだから。それだけで男どもは十分ヌケるわよ」
「それならいいんですけれど」
「でも、最初はどうなることかと思ったけれど、未悠子ちゃん、あなた、ずいぶんといい度胸してるじゃない」
 香山さんは私の腕を叩いた。
「カメラの前での初オナニーだっていうのに、何のためらいもなく、いきなりズボッ、でしょ? それでイッちゃうんだから」
「イッた?」
「違うの?」
 香山さんは私の顔を覗き込んだ。
「静かなんだね、未悠子ちゃんは」
「私、声とかはちょっと」
「そう? 恥ずかしいんだ、未悠子ちゃんは」
 香山さんは笑った。
「でも、藤沢監督が持ってきたバイブ、どこのメーカーのかしら? 見ていてすごくよさそうだったんだけど。ねえ、先端とか、わりと軟らかい素材でできているんじゃない?」
「え、ええ」
 私は曖昧に答えた。
 バイブを挿れたのは今日が初めてだった。だから他のバイブと比べられても、私には答えようがなかった。それに、私が感じたのはバイブのせいだけじゃない。そう、藤沢監督の――あの人の指がクリトリスに触れるたび、私の腰はくだけ、脊椎は引きつった。監督は、あえて私に触れようとはしなかった。接触は全くの偶然――まるで私を焦(じ)らすように。
「午後は少し踊ってもらうことになると思うから、そのつもりで準備しておいて」
 監督は仕出し弁当(いわゆるロケ弁)に箸をつけながら言った。
「こう、踊りながらぬいでゆくイメージで――ショーツなんかを足首に引っかけて、そこでアラベスク――よくある古典的なカットだけれどもね」
「わかりました、やってみます」
 監督の指示を受け、私はどうにか人心地を取り戻しつつあった。
「がんばって」監督は言った。
「撮影が終ったら、ラーメンでも食べにいこうか。おごるよ」
「ラーメンですか」
 あつあつの湯気が立ち上るどんぶりのイメージを思い描き、私は思わず唾を飲みこんだ。ああ、おいしそう。食べてみたい――自然とそんな気持ちになった。
「西口の思い出横丁にわりとおいしい店があるんだけれど……なんだかラーメンはあまり好きじゃないみたいだね」
「そんなことないです」私は向きになって否定した。
「ちょうど食べたいなあと思っていたところです」
「そう」監督は穏やかに微笑んだ。
 藤沢監督と一緒にラーメンを食べる――私の心は不思議と弾んだ。そういえば、もう何年もラーメン屋なんて行っていない。せまく雑然とした店内を想像しながら、私の胸は幼い日の思い出に踊っていた。バレエの帰りによく母と一緒に立ち寄った小さなラーメン屋さん――あのホッとするようなあたたかさ、一日を無事にしめくくるラーメンの味――その味はすっかり忘れてしまったけれど、ぬくもりだけはこの手でしっかりと覚えている。

 それが私の小さな幸せだった。

              ぬくもり(1) 了

 前回の記事から三ヶ月以上空いてしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか?
 私自身、多忙にしておりましたけれど、先日、たまたま連載小説の中にも登場する「思い出横丁」でラーメンを食べる機会がありました。大変おいしくいただきました。大ガードのすぐ近くのとても狭いスペースに、たくさんのお店がひしめきあっている情緒豊かなところです。
 そんな私の今日の昼食も、やっぱりラーメンでした(笑)

     【お話】有坂理紗子さん(文学者)

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2011年3月15日 (火)

連載小説『東大卒・企画女優』〈28〉【付・星桜夏希さん、被災地支援に】

book 連載小説『東大卒・企画女優〈28〉
  オナニー(6)

   Synjuku_012

「じゃあ、いいかな」
 私が頷くのを見て、監督はもう一つのスイッチもオンにした。
 ジイィィィ……
 クリトリスを刺激する小刻みな振動――私は声を漏らすまいとして歯を食いしばった。
「はっ」「んっ」「あっ」……。
 切ない吐息、言葉になる以前の本能的な息が喉の奥から漏れ出した。
 けれど、私は決して声をあげようとはしなかった。一人で喘ぎながらオナニーをする習慣など、私にはない。私はそこまで堕ちてはいない――そう信じていた。
 けれど、私の身体は確実に感じ始めていた。全身が何度か大きく引きつりそうになり、そのつど監督は私の身体を抱き止めてくれた。私の顔は苦悶に歪み、けれど何をコメントするでもなく、与えられた仕事をただ淡々と受け入れるのみだった。
 監督はじっとそのまま寄り添ってくれた。そんな奇妙な光景が何分か続き、私はようやく一回目の絶頂に達した。私の身体が弛緩するのを見て、監督は私がイッたことを理解したようだった。
 けれど、私は本当にイケたのだろうか? 
 これが本当のオーガスムなのだろうか?
 でも、私にとっては間違いなくこれが性の絶頂であり、それ以上でも以下でもなかった。AVで見るような華麗なオーカスムなど、私の体験した人生にはないものだった。それはテレビの中の世界、決して私にとっての現実ではない。そんな小さな現実を、それまでの私は何も疑ってはいなかった。これがイクことなのだと、そう思い込んでいたのだ。
 けれど、監督の目にはどう映ったのだろう?
 でも、他にどうすることもできはしない。私は確かに達していた。物静かに、でも、間違いなくなく……。
「よかったよ、真悠子ちゃん」
 監督の笑顔は私をいくぶん安心させてくれた。
「声――出さないタイプなんだね、真悠子ちゃんは」
「やっぱり、出してやったほうがいいんでしょうか」私は訊いた。
「そういう演技を求められる場合もあるね。セックスの最中に手を使って動きを出すように指示される場合もある。ほら、バレエやフィギュア・スケートと同じで」
 監督はそう教えてくれた。

          オナニー(6) 了

 東北地方太平洋沖地震の被害が深刻化していることもあり、私たちも知人の安否を心配しているところです。私が人から聞いたところでは、他の地域に持ち家があり、そこへ避難できるにもかかわらず、自分一人だけ逃げ出すようで抵抗感があるという被災者の方もいるようです。非常時ですから、他に身寄りのある方は、事情が許すのであれば、気がねせずに安全な場所へ移動していただきたいと思います。
 東京電力、東北電力管内の電力不足も懸念され、国内初の輪番停電が実施されている時節柄、私たちも電気機器の使用を極力控えるよう意識しなくてはならない状況となりました。関電からも震災翌日に電力融通が始まっていますが、変電の関係から送電量が限られているため、東電管内の皆さんの節電努力に負うところが大きい状況です。

   Ut_049
   【写真】東京大学総合図書館

 2000年のカリフォルニア電力危機の時には電力取引会社の意図的な売り惜しみによる市況操作の疑いが浮上し、そのために州がエンロンを始めとする各社に90億ドルの返還を求めるという事件が起こりました。この時に輪番停電が行なわれ、今回の日本初の計画停電のモデルとなりました。電力自由化に伴う法的な取引規制がなかったことが背景にありますが、電力先物におけるトレーダーの暴走という構図は、エンロン事件全体の一側面をよくあらわしています。
 
トレーダーの暴走はガス市場でも起きました。ガス不安を煽って市況操作を行なったとされます。ワーテルローの戦いに際して、英国敗北の不安を利用したネイサン・ロスチャイルドの伝説を連想させますね。この時、ネイサンは英国勝利を知りながら、猛烈な売りによって故意に株価暴落の口火を切り、直後に安値で買い占めるという荒業を演じています。
 当時、アメリカのビジネス史上最大の倒産劇といわれたエンロン破綻のもう一つの側面として、監査会社をも巻き込んだ粉飾決算の問題が注目されます。SPE(Special Purpose Entity=特別目的組織,特別目的事業体)と呼ばれる連結外子会社に負債を付け替える手法を利用し、エンロンは負債を増やすことなく成長することに成功しました。SPEが資産を担保にして借り入れた資金は借金ではなく、資産売却したものと見なされたのですね。VPP資産などが担保として組み込まれた金融商品が投資家に販売されていました。また、損失をSPE間でたらいまわしにして簿外損失にするなど、高成長を装うことで取引を拡大させていたのですね。
 こうしたよくわからない金融ビークルの存在、評価のよくわからない債権を組み込んだ金融商品の取引などは、後のサププライムローン問題へとつながる金融技術上の問題と通底するように感じられます。予想通りの正確なリスクヘッジができなかったのですね。
 去年、民主党政権が地震再保険特別会計の事業仕分けを行ないました。枝野幹事長が担当した仕分けでした。大規模地震に際しても国は保険加入者をしっかりと保護するという方針が示されましたが、そのためにも再保険先を日本国内だけではなく海外に求めるなど、リスクを分散させておく必要があるのでしょうね。一方で、現行の政府再保険制度が一因となり、海外の再保険会社は今回の震災による損失をある程度まで回避することができたと報じられています。ですが、欧州系の再保険会社の格付けが下げられるなど、総じて無関係ではいられないようです。
 一方で、阪神淡路大震災後と同様、かえって円高圧力が高まることも懸念されていますが、今のところ為替は安定を保っています。前の震災時には79円まで上がったことも踏まえ、今後の推移が注視されます。

     【お話】有坂理紗子さん(文学者

星桜夏希さん、被災地支援に【13日】
作家の星桜夏希さんが東北太平洋沖地震の被災地支援のために福島で活動していることが本人のツイートでわかった。「揺れとかは比較的大丈夫ですけど、ガソリンが供給少なくなっています。自動車の暖と電気のありがたみが身にしみます」「震災応援で渋滞によく並ぶのですが、原因は結構ガソリンスタンドに並んでいる車からになっているみたいです。ガソリン足りてないみたいです。ガソリン予備に持って来てるけど心配です」「私の震災応援は関係のある仕事場の現場復帰のお手伝いです。無事一つ目が終わりました。次の仕事場に行きます。まだ物はないですけど、震災前の形を取り戻せました」「福島なう。今日までに5つの場所でお手伝いして来ました。本当は太平洋側まで行く予定でしたが猪苗代まで戻って来ました。ニュース見てます。どうなるのかな」と夏希さん。りさこは「夏希さん、余震に気をつけてがんばって。こっちは大丈夫だからね」とエールを送った。

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2011年3月 8日 (火)

連載小説『東大卒・企画女優』〈27〉

book 連載小説『東大卒・企画女優』〈27〉
  
オナニー(5)

   Todai_072_2

「これ、どうかな」
 監督は用意した紙袋から淡いパステルブルーのバイブローターを取り出した。それはまるで現代アートの一作品のようだった。丸みを帯びたポップなデザインと機能的な造形が目を惹いた。監督は付属品のゼリー入りコンドームの袋を破ると、それをバイブの先端に嵌め、ローションを塗った。
「これ、新素材のバイブなんだけど、女の子たちの間でわりと評判がいいんだよ」
 監督は私の手にそれを握らせると、ゆっくりとそれを体の中へと押しこんだ。
 スブ……
「大丈夫かな」監督は私の顔を見ながら訊いた。
 刹那、頭の中が真っ白になった。
「ここでいいかな?」監督は訊いた。
「きちんとしないと怪我のもとだから……自分でよく位置を確かめて」
「大丈夫です」監督の手のぬくもりを感じながら、私は答えた。
「気もちいいです」
「そう、よかった」監督は微笑んだ。
 私は監督の手を握り返し、その上にもう一方の手を重ねた。
「電源――入れてもいいかな」
 監督の言葉に、私は目で頷いた。
 ヴィィィーン
 心地よい振動が、私の全身を波立たせる。監督の指の背が期せずしてクリトリスに触れ、私は一度大きく上体を痙攣させた。
「監督」私は押し殺したような声で言った。
「まだ奥まで入りますから……もうちょっと挿れても大丈夫です」
「無理しなくてもいいよ」
監督はやさしく言ってくれた。
「大丈夫です」私は監督の手を握りしめたまま、バイブを子宮頚部まで押しこんだ。
 バイブを前後に動かして快感を高めようとする私――監督もそれに応えてくれた。それはついに根元まですっぽりと収まり、サブ・バイブの先端がちょうどクリトリスにぶつかる格好となった。エラストマー樹脂のやわらかな突起がクリトリスを包み込むように林立していた。
「んっ」
 私は唐突な刺激に小さく息を漏らした。
 不意にバイブの位置がずれ、突起が陰核の側面をこすりあげたのだった。
 その疼くような刺激に抗うことができずに。
「ここについてるクリバイブが少し変わってるんだ」
 監督は言った。
「感じやすいように接触部が大きめに設計されているんだよ。突起の数も増やして――ブラシみたいでしょう」
 私は黙ったまま頷いた。
 唇を開いてしまったら、もう淫らな息を抑えることができそうになかったから。

     オナニー(5) 了

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「ヌードアート紀行」第6回は手違いにより掲載できませんでした。悪しからずご了承下さい。

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2011年2月12日 (土)

連載小説『東大卒・企画女優』〈26〉【付・りさこ、東方神起にハマる】

book 連載小説『東大卒・企画女優〈26〉
  オナニー(4)

   Todai_069

「スカート――少し邪魔だね」
 監督は何の予告もなしに、私のスカートを腰の上までめくりあげた。監督の顔の高さに、ちょうど私のお尻があった。それは彼の鼻先をかすめるほど間近な位置にあった。私はそんな彼の頭を見下ろしていた。恥髪に散乱したローションが、朝露を思わせる水玉となって叢の中で光っていた。
「腰をおろして、真悠子ちゃん」
 監督は私の腰と太腿に手を添えて、ゆっくりと私を導いた。私は言われるがままに、ベッドの上にお尻をつけた。
「足を開いて、カメラの方を向いて」
 監督は私の左腕に触れ、カメラの方向へと身体の向きを変えさせた。そして私の右手をとると、示指と中指にたっぷりとローションを絡ませた。
「挿れてみて」
監督は穏やかな口調で言った。
 私は目で頷くと、右手の指二本をゆっくりと割れ目の中へと挿しこんだ。
「いつもしているようにやってもらえるかな。別に演技しなくてもいいから」
「はい」
私はそう答えると、二本の指で膣内を掻き回し始めた。
 クチュ、クチュ、グチュ、グチョ……
 淫らな音を立て始める私の身体――けれどそれは、まったく退屈な光景だった。私は全くの惰性で同じ行為をくりかえしていたに過ぎなかった。それほどの快感もなかったし、色気も何もなかった。
 クリを触る勇気はなかった。感じてしまいそうで怖かった。それに、クリ派だと思われることに抵抗があった。早い話が、私はクリでしかイケない女だった。
「あの、こんなのでいいんですか?」
たまらずに、私は監督に訊いた。
「いいよ、真悠子ちゃん」監督は笑った。
「だんだんと感じていくようにしてみよう。リラックスして」
監督は私の肩を叩いて言った。
「本当にいい陽気だね、今日は」監督は窓の外を見ながら言った。
「そろそろお昼かな。お腹へったでしょう、真悠子ちゃんも」
「いえ、そんなには」
私は股間をクチュクチュやりながら答えた。
「緊張してしまって、ご飯どころじゃないという感じで」
「そうか」監督は再び笑った。
「ドキュメンタリが苦手な女優さんって意外と多いんだよ。あまりプライベートを出したがらないというかね」

    オナニー(4) 了

 今、11日の『LADY~最後の犯罪プロファイル第6話の録画DVDを観ながら、居間でブログを更新しています。なにしろ、私は北川景子さんのファンだから(笑)
 今回の「LADY」は新堀くんの痛い過去のお話(笑) 元彼女が司法試験に落ちる確率を計算してしまい……いや、そんな確率がわかるなら計算法を私に教えて(笑)
 そんなことよりも、彼が北川さんのことが好きで半ばストーカー化していたという衝撃事実(作戦?)が明らかに……いや、たぶん、事実だな、アイツは。
 さて、今回も何をどう駆使したのか、地理的プロファイリングと多変量解析で犯人に辿りついてしまった新堀。改稿作業中の私の新刊『
阿依子~彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』にも多変量解析について触れたシーンが出てきます。

「『パルジファル』の〈愛餐の動機〉と『タンホイザー』の〈若き巡礼たちの合唱〉――この部分、局所的には同じフレーズなんです。これがワーグナーの癖なんです。次の音が、その前に使われた音に依存してあらわれる――マルコフ過程です。犯罪情報分析も同じです。犯人のもつ固有のパーソナリティが、ある特定の偏りをもった刺激と反応のパターンを生み出す、それを多変量解析にかけて犯人像を確率的に絞り込む――。一方、第0次情報源の場合」
      (『阿依子』第2夜)

 この原稿も4年以上前のもので、この台詞も最終的に本に残るかどうかわかりません。
 一方で、地理的プロファイリングに近い捜査技術もちょこちょこ。

「神奈川県警に照会したところ、〈R・MUTT〉のタギングが桜木町駅の周辺にこんな分布で確認されていたの。ルーチン・アクティヴィティ・パターンを分析した結果、犯行は土曜の夕方から夜にかけて行われ、その範囲から考えて、犯人の犯行領域内における移動手段は徒歩、犯行地理的な区分は通勤型で、犯人の居住地は犯行地点からは隔たったところにあると推測される――おそらく、JR線を利用している四〇歳以下の男性」
      (『阿依子』第2夜)

 この箇所も本に残るかとても微妙なところ(笑) 当時、科警研防犯少年部で開発していたGIS(地理情報システム)や、C-Patに興味があって、北大路書房(業界では有名な心理学書の出版社です)の本ばかり読んでいました。

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   【写真】東京大学・法文1号館1Fホール

 なお、犯人のファンタジーを分析する北川さんの分野に近い手法には「犯行のテーマ分析」というものがあります。連続強姦犯のリンク分析にはMSA解析が用いられ、それに基いて布置図が作られます。2003年以降、日本の警察でも犯罪情報分析の積極的な導入が始まり、刑事部刑事総務課に犯罪捜査支援室が置かれています。その中に犯罪情報分析係があるんですね。 
 一見すると警察小説のように見える『阿依子』ですが、ぜんぜん違うんです(笑) 様々な分野のトピックスを集約しながら、それでいて詩的な統合を失わない作品を書くことができたらと思っています。

     【お話】有坂理紗子さん(文学者)

~お知らせ~
今回の「ヌードアート紀行」は執筆者多忙につき、休載とさせていただきます。

info02 りさこニュース

りさこ、東方神起にハマる【12日】
文学者の有坂理紗子さん(年齢非公開)がフジ系列で好評放送中のテレビドラマ『美しい隣人
の主題歌『Why?(Keep Your Head Down)』にハマりまくっていることがわかった。「東方神起、二人きりになっちゃった上に、ちょっと日本語力が落ちちゃってますけど、あの日本語にない独特の口腔音が歌に深みを与えていていいですね。訛ってるのがプラスの方向に出ているんですね。ドラマの内容とうまくマッチしていて、いつもヤバイ雰囲気のところでエンディングに突入するから怖い」と、りさこ。「しかし、神を名乗るとは、織田信長以来の大物ですね」と結んだ。

加藤シルビア、みのもんたに抵抗【9日】
TBSの朝のニュース『みのもんたの朝ズバッ
で、アナウンサーの加藤シルビアさん(25)をみのもんたさん(66)が難詰した件が一部で話題を呼んでいる。覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕状が出ている小向美奈子容疑者(25)について、みのさんが「この人、再犯でしょ」と犯行事実を断定、加藤さんは刑事訴訟学上の「無罪の推定」(推定無罪)の立場から「まだ容疑の段階」と訂正、みのさんが「どうしてかばうんだ」と詰め寄る場面も。りさこは「まあ、みのさんもいろいろ言いたいのはわかるけど、加藤さんにも公正な報道をする責任があるから。最後まで屈しなかったのは立派。さすが大学で量子力学を専攻していただけあって理屈を曲げない人」と加藤さんを評価。一方で「私も覚醒剤事犯の裁判を取材したことがありますが、実際あっけないもので、司法としてもどこまで更生の見通しについて責任ある判断を示せるか疑問。判決だけ下してあとは放置ということにならないように国としても制度設計すべき。これは犯罪者の更生全体にいえること。厚生施設の人はがんばっているのだけれど」と問題点を指摘した。

星桜夏希さん、おじさま愛【8日】
作家の星桜夏希さん(年齢非公開)
が中高年の男性に胸をときめかせていたことが本人のツイートからわかった。「今日は車検に行きました。車屋さんの担当のおじさまがすんごい腰低くて丁寧にしてくれてこれこれこうで、ちょっと弱っていますが、あと半年は持つと思いますので、半年点検のときに~とか色々優しく教えてくれました。声もすんごい綺麗でドキドキしてました(…)やっぱり男性は渋さかもですよね」と夏希さん。さらに「高校生時代から遊んでばかりいた」と衝撃発言。りさこは「高校生からおじ様まで、私には夏希さんが信じられません!」とショックを受けている模様。「早く幸せになって」とコメントしている。

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2011年2月 4日 (金)

連載小説『東大卒・企画女優』〈25〉【付・りさこ、『LIGHT WING』にハマる】

book 連載小説『東大卒・企画女優〈25〉
  オナニー(3)

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「じゃ、やってみようか」監督は手にローションを取りながら言った。
「スカート――脱ぐか、たくしあげるかしてもらえるかな」
 私は上品な仕立てのフレアスカートに目をやった。
「これ、は穿いたままじゃいけませんか」
「いいよ。真悠子ちゃんのできる範囲で」
 監督は言ってくれた。
「でも、パンツは脱いでもらわないと――でしょう?」
「はい」
 私はゴソゴソとスカートの中に手を入れた。紐の結び目を解き、純白のそれをスカートの中から抜き取った。ゴムの跡が残らないように、昨日は一日、下着はつけずに過ごした。今朝もゴムのないものを選んで穿いてきた。
「ふだんやっているように触ってもらえるかな。もう濡れてる?」
「あの、まだそんなには」
 私は正直にそう答えた。
「じゃあ、ローションを使って――無理に挿れて怪我なんかしてもあれだから」
 監督は私にローションを手わたした。私は頷いた。蓋を開けると、アロマオイルのような心地よい香りがふわりと立ち上った。私は容器を傾けて中身を手に取ると、それを右手の掌全体によくなじませた。そしてベッドの上に両膝をついて腰を立てると、スカートの下から手を這わせ、下腹部に――。
 ペチャ、ペチャ、ペチャ――
 そんな音が、無言の部屋に響きわたった。

      オナニー(3) 了

 最近、居間で仕事をすることが多いので、すっかりテレビっ子になってしまいました(笑) 今日も『CONTROL~犯罪心理捜査』と『美しい隣人』を観てしまいました。それにしても、仲間さん、悪い人ですね。あんな隣人はもちたくないものです。檀れいさんがかわいそう。
 話は変わりますが、ここしばらく『東大卒・企画女優』では自慰の撮影シーンを扱っています。改稿作業中の新刊『阿依子~彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』にも自慰にまつわるシーンが登場します。

 この仕事をしていると、患者(クランケ)の母親から娘の自慰をやめさせたいという相談がしばしば寄せられる。この子にも過去に顕著な自慰癖があったのかも知れない。そんなところをいじると馬鹿になる、手が腐る――そんな脅迫じみた躾が、少女の心に手の使用に関する罪悪感を植えつけたのかも知れない。
     (『阿依子』草稿)

 子育てをしていると、幼児オナニーの問題にぶつかることがあります。私自身、この問題に体験上の関心があって、無料で公開しているオンライン小説『Mother~母を抱いた少年』の中でも取り上げたことがあります。幼児オナニーを禁じる母親、同時にわが子の性器を何かしらの関心をもって見つめる母親のこと。

「性欲を罪悪視する心理が去勢コンプレックスだ。たとえば、それは幼児オナニーに対する過度の躾などから生じるといわれている」
 向坂は説明を始めた。
「こういう仕事をしていると、母親からわが子のオナニーをやめさせてほしいという相談がしばしば寄せられる。だが、躾の仕方によっては、子供の心に性や性器に対する嫌悪感を植えつける」
 わが子の自慰を見つめる母親たちの視線――
「君はお母さんから監視され続けてきたんだ。同時に、お母さんは無意識的に君のペニスに固着し続けてきた――ペニスは所有の象徴なのだ」
     (『Mother』第41話)

 ほとんど同一文ですね(笑) ですが、オリジナルの原稿は『阿依子』のほうが古く、『Mother』のこの場面は『阿依子』からの派生そのものです。
 『Mother』は母親を殺害してしまった少年と、その精神鑑定に臨む精神科医の向坂紘一郎の対話を中心に、次第に異界へと迷い込んでゆく向坂の精神的遍歴を描いた作品です。ノーベル賞詩人のイェイツや、「世界で最も邪悪な男」アレイスタ・クロウリーなど、奇々怪々なオカルティストのエピソードも交えながら、話は破滅的な結末へと向かって進んでいきます。社会正義の権化のような地検検事、ノヴァーリスの魔術的観念論やボードレールのコレスポンダンスを嬉々として語る高校生、英語科の男勝りの女性教諭など、周囲の個性的な登場人物にも注目です(笑) それは私自身の高校生活のなつかしい回想でもあります。

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   【写真】夜の東大医学部本館

 一方でこの作品はもともと漫画として構想されていたこともあって、内容、構成とも小説としてはいろいろ不十分な点がありました。なので、無料の作品ではありますけれど、改稿してもう少し面白みのあるものにしたいと思っています。というのは、以前、読者の方からこんなご感想をいただいたことがあって。

 英雄として昇華する過程の少年が物語の主人公であるとすると、果たして彼が得るものは何なのだろうか、と回らぬ頭で考えます。世界を呑み込む太母を殺す者は、決まって英雄たる証を手に入れる。けれど少年の手は空であるように見えます。まだ彼の闘いは終わっていないのかもしれないと、母の産道の如く深長な闇を想像し、独り勝手に薄ら寒くなったりして(笑
 が、読み進めるごとにタイトルからして実はミスリードなんじゃないかという気もしてきました。ざっと粗筋を見たときは、単純にユング元型論を軸とした現代版母殺し神話という感じかなと思い、そのように解釈して読んでいたのですが、何だか少し違う方向に物語が転じていきそうな雰囲気に……
 最後にカタルシスを味わわせていただける予感を抱きつつ、今後ももやもやしながら拝見させていただきたいと思います。
     (COMAさん・2008年12月2日)

 
 確かに、この小説は「タイトルからして実はミスリード」なのではという、この方の感想の通りの展開を企図したもので、少年の母殺しの問題とは全く別の問題がクローズアップされてくる仕掛けになっていました。けれど、改めて考えてみると、この読者の方が期待していたものは、もっと別なものではなかったかと思えてならず……。そんなこともあって、ぞんざいな作品ではありますけれど、あえて改稿を決めました。
 そうこうしているうちに、いつも本業がおざなりになってしまう私です(笑)

     【お話】有坂理紗子さん(文学者)

ヌードアート紀行(第5回)

■事情につき本文を削除いたしました     

 

info02 りさこニュース

元五輪代表の小池昭彦さん、正しいウォーキングを指導【2009年】
文学者の有坂理紗子さん(年齢非公開)の高校の先輩に当たるシドニーオリンピック50km競歩代表の小池昭彦さん(37)が2年前の2009年に神戸市立中央体育館で正しいウォーキングの技術について講演・指導していたことがわかった。りさこは「高校在学中に国体で2位に入った人。でも、五輪本番で失格しちゃったんですよね」と残念がる。「もともと日立に一般の社員として入社して、普通に仕事しながら競技してた偉い人。普通に仕事をするというのは大変なこと」と共感を示した。小池さんは慶応大学法学部政治学部出身。在学中はインカレの1万メートル競歩で優勝。スポーツコーディネーター。

星桜夏希さん、煮込みうどんをぶちまける【3日】
作家の星桜夏希さん(年齢非公開)がせっかく作った煮込みうどんを部屋にぶちまけていたことが本人のツイートから明らかになった。
「こたつさんにあたって、あつあつ、ほくほくしようと思って持って行くとき。つるっ。がっしゃん。流れるおみそさん。濡れていくスリッパ。散乱するなべとうどん……」と夏希さん。ショックを隠しきれない様子だ。りさこは「食べるしかないでしょ」と淡々としたコメント。「だから、私の実家で一緒に食べようよって言ったのに。山本屋のおいしいのがあったのに」と根にもっている様子だ。

りさこ、『LIGHT WING』にハマる【2日】
文学者の有坂理紗子さん(年齢非公開)が「週間少年ジャンプ」で連載中の神海秀雄さん(29)
の『LIGHT WINGにハマりまくっていることがわかった。「神海さん、好きな漫画は「るろ剣」って語ってますけれど、私にいわせればJOJOですね。あれは絶対にスタンドですね。擬音と台詞も」とりさこさん。神海さんが荒木飛呂彦さん(『JOJOの奇妙な冒険』の作者)のアシスタントだったということを知らないらしく、得意げだ。「にしても、「あの人」、悪い奴ですね。私を呼んでくれれば、天谷リヒテンシュタイナー・リヒトホーヘン・リヒター・吏人くん(16)に代わってボッコボコしてあげるのに」と、りさこ。主人公に勝手なミドルネームを付けた上に、焛童心亜くん(17)に対して大人気ない発言をくりかえしている。「なんか、Aチームの監督って実はユーシさんなんじゃないかって思うのは私だけ?」と「ユーシさん転向説」を提起、「次回が楽しみ」と語った。

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2011年2月 1日 (火)

連載小説『東大卒・企画女優〈24〉』【付・猪瀬直樹さん、都営地下鉄に携帯アンテナを】

book 連載小説『東大卒・企画女優〈24〉
  オナニー(2)

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「たしか大丈夫だったよね、オナニーは」監督は確認するように言った。
 
私は不安げな目を向けて、香山さんの顔を見た。「ガンバ」「チャレンジ」――彼女の口はそう言っているように見えた。
「何歳ころからしているのかな、オナニーというか……マスターベーション」
 そんな鼻白むような質問を、藤沢監督は直に私にぶつけてきた。
「小学六年の春休みというか――中学に入る直前から……なんとなく」
 私は正直に告白した。不思議とそのことに恥らいはなかった。この手のビデオではよくある質問――別に何歳と答えたっていい。早ければ早いほど話は盛り上がる。いっそ小三くらいと答えておけばよかったかもしれない。
 直接性器に触れるようになったのは十二歳の時からだった。けれど、股間を机の角にこすりつけて摩擦したり、股間に枕を挟んだり、シャワーをあてがったり――そんなことは、わりと早くからやっていた。それは不思議な感覚だった。これが快感なんだと意識してやっていたわけではなかった。けれど、何か痺れるような、疼くような――他の皮膚感覚とは異なる、説明のつかない心地よさを感じた私は、その感覚が何に由来するものなのか、確かめずにはいられなかった。
 最初、その感覚が性器の摩擦によって生まれるものだとは、まるで気がつかなかった。意識してそれに触ろうという気にもなれなかったし、触り方もよくわからなかった。何となく汚い場所というイメージが先行していた。性器を触ること自体が、私の中では一つのタブーとなっていた。
 小学校低学年の頃、私はエロとかスケベと呼ばれていたような記憶がある。私はむしろ性的に奔放で、幼い身体は、ほとばしるようなエロスの充溢に満たされていた。極めて感じやすく、性的に充満した存在――それが幼い日の私だった。
 けれどそれは、高学年に入ってから一変した。母親から受けた叱責のせいなのか、それとも成長に伴う知的抑制の産物なのか――私は次第に性を抑圧し、それと同時に物静かで内気な一面を強めていった。けれどこの内向性は、物心がつく以前からのものらしく、保育園の頃にはすでに備わっていた心的特性だった。
 こうして私は、思春期の目覚めとともに性的活動から目をそむけ、有り余る性欲のやり場を失っていった。せめてそれを小出しに表現してゆくことが許されていれば、私はこんなところでカメラを前にして痴態を披露する羽目に陥ってはいなかったことだろう。
 そう、私は性的な幻想に取り憑かれていた。性的に解放されることにより、私は初めて救われる――そう信じることさえできた。

       オナニー(2) 了

 

最近、仕事をしながらテレビドラマに夢中です。私が北川景子さんの私的なファンということもあって『LADY~最後の犯罪プロファイル』は全部DVDに録画(笑) 年末年始の『相棒』スペシャルも録画(笑)
 前にもお話しましたが、秋に刊行予定の新刊小説『
阿依子~彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』にも魅力的な女性警察官たちが登場します。といっても、警察小説ではないんです。彼女たちが追っているのは、一つにはミッション女子高の寄宿舎で起きた奇怪な変死事件、そして、捜査の目的さえ明らかにはされない不可解な公安案件――物語は女子高生の内的世界をめぐる精神的な遍歴と、警察の捜査という二つの軸を中心に、複数の視点から描かれます。
 物語の舞台も多彩です。その重要な一つが東京大学。でも、あくまでも実在の東京大学とは一切関係ありません、フィクションですから(笑) 日本で初めて犯罪生物学を専攻し、犯罪学・司法精神医学の基礎を築いたといわれる吉益脩夫も東大精神科の出身です(『東京大学精神医学教室120年』)。戦前の1927年に司法省から受刑者の精神医学的研究を嘱託されたのが、その出発点となりました。

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 【写真】東大病院。
 
右の建物の地下1階が精神科医局

 物語にも一人の精神科女医が登場します。東大医学部を出て事件の舞台となる女子高の専任カウンセラーとして赴任した美花――日本人とフランス人のハーフです。事件の背後に、かつて自らが関わった不可解な猟奇事件の存在があることに気づいた美花は、都内の刑務所に一人の受刑者を訪ねます。彼は言います。

「ミカ、君は恩師からいったい何を習った?」男は仕切り板に顔を近づけた。
「FBIの分析手法は知っているだろう? 君は犯人と同じ価値観を共有しなくてはならない。同族意識を利用し、共感によって供述を引き出す――モチベーショナル・インタビューイングの捜査的な応用だ。性犯罪の動機は単なる性欲の異常とは限らない。求めるものを合法的に手に入れることができない弱い人間が、別の方法で自己の尊厳を回復しようとする絶望的な試み――その説明は、いわゆる一般緊張理論とも合致する」
  (『阿依子~彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』草稿)

 でも、初校を大幅に改稿中なので、こんなシーン、なくなっちゃうかも知れませんけれど(笑) 28日の「LADY」第4話にも同じようなシーンがありましたね。死刑囚との面会の場面。一方、事件では元素番号が暗号として使われていました。犯罪統計を専門とする新堀(平岡祐太)がゲマトリアでの解析を試みていましたね(笑) ホワイトボードの数式はモジュラス数学のものでした。
 通俗カバラで用いられるゲマトリアは、対象となる数を9を法として計算するというものです。占いなどで人名などの文字を数値に変換し、その数値の各桁の和を計算して基本数を求めるのはこの方法によるものです。たとえば、ある言葉を数値に置き換えて624という数を得た場合、それを変換すると

   6+2+4=12≡3(mod9)

 となります。こうした「桁和の数」には独特の規則性がありますが、それらは十進法という記数形式に依存するもので、自然界に現象として観測される規則というよりは、純粋に数学的なものです。私たちが普段使用している記数法は事物の絶対的な量をあらわすものではなく、それを特定の形式の中で置き換えたものにすぎません。10を底とする位取り記数法を導入することで、絶対的な数量を0~9の10種類の数字によって効率的にあらわしているのですね。
 「桁和の数」はモジュラス数学を限定的に使用するもので、扱いについては普遍性を欠いたシステムになっています。たとえば、9という数の「桁和の数」はそのまま9となりますが、モジュラス的には

   9≡0(mod9)

 となります。ここで変換が必要になります。「桁和」の数がもつこの仕組み自体が、9より少ない数や0、あるいは負の数に問題を拡張しようとする場合の障害になりますが、一方で、純粋に桁和の問題を数学的に規定して使用する時、そこには純粋に整数論的な世界が立ち現われます。たとえば、特定の関数から得られる変数を桁和で処理した時、非常に興味深い数列が得られます。その幾何的な構造は、「桁和の数」がもつシンプルな記数形式に基く明瞭さと規則性をもっています。
 桁和は十進法における9という数の特殊性と結びついた規則をもっています。そうしたことに最初に関心を示したのはアラビア人ではなかったかと記憶しています。

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  【写真】東京大学理学部新1号館

 それにしても、他の仕事が多忙で、ずいぶんと原稿をほったらかしにしてしまい、本当に関係各位にはご迷惑をおかけしています。最初にあげた原稿は2007年頃のもの。でも、原作は2005年頃のものなんです(笑) 怠惰ですね、私。
 理学部の新1号館でガラス張りの天井越しに、輝く夜空を見上げながら執筆した作品です。

    【お話】有坂理紗子さん(文学者)


ヌードアート紀行(第4回)

■事情につき本文を削除いたしました

   

info02 りさこニュース

東京都副知事の猪瀬直樹さん、都営地下鉄に携帯アンテナを【1月20日】
文学者の有坂理紗子さん(年齢非公開)の高校の先輩に当たる東京都副知事の猪瀬直樹さん(64)
が20日にソフトバンクモバイル社長兼CEOの孫正義さん(53)が会談し、都営地下鉄構内における携帯電話のアンテナ工事の早期実現について意見交換した。猪瀬さんのブログによると「トンネルのなかにいて災害時にもメールができればよい」「朝、会社へ着いたら30分ぐらいメールの処理に追われるけれど、通勤中にできれば生産性も上がる。成長戦略だね」など、互いにメリットを確認しあったという。「いや、それよりまず長野県の中山間地にアンテナを。私が山で取り残されたらどうするんですか」とりさこさん。「長野市内でも山の集落は圏外。県庁所在地なのになんで!?」と泣いていた。

星桜夏希さん、エッセイ執筆【27日】
作家の星桜夏希さん(年齢非公開)がエッセイを執筆したことが本人のツイートからわかった。「ちょっとエッセイみたいなのを書いてみることにしました。とはいうものの、難しいですね。普段の私って、結構辛辣なことをばさばさ言ってしまうところがあるので(ほんとに?)書いてみて色々もにょってしまいました」と夏希さん。「どんな毒舌エッセイになっているのか、気になる」とりさこさん。「いつもやさしい夏希さんでいて」と不安げだ。

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